ホーホー。
どこかで怪しく鳴く梟の声が、不吉な夜を暗示する。
いや、いたのか知らないけど。
夜。
とにかく夜だ。
夜になるとおもちゃが勝手に宴会をしている、という今思えば結構不気味な歌があるが、さぁ、不吉な夜の幕開けだ。寝ている人間に気づかれないように宴会をしているおもちゃたちのほうがどれだけ人畜無害だろうか。
ふ:「おやすみー」
狼:「おやすみー」
べ・じ・ば:「「「おやすみー」」」
もと二世帯住宅だった祖父母の家。
祖父母が二階、叔母家族が一階だった。
今は叔母家族は叔父の仕事の関係で都内に越してしまい、今は一階は無人。しかし家具一式はすべて残してあり、ふぁんぐは従姉妹の部屋の置き去り組の机を使うことに。従姉妹の部屋には、ベッドとソファと、と居間にあったものまで雑多に突っ込まれていた。祖母の足がオーマイガーになってしまったからこの騒ぎが起きたわけで、居間にあった家具をどけて、二階にあった祖父母のベッドを持ってきたからである。まぁなんとかちょうど布団一枚が入る程度の隙間が空いていた。その空間の中に横たわればそそり立つベッドと本棚そしてソファ。
本当は我ら親子には和室があてがってあった。しかし。
「母さんと僕が一緒に寝るってことはさ、考えてもみなよ♪母さんと野放し狼曉が一緒に寝るってことなんだよ」
「……………」
という不毛なやり取りがされたあと、従姉妹の部屋がやはりまだむべりーの寝床に選ばれた。
そして消灯。
「……ねぇふぁんぐぅ…」
「……………」
「ふぁんぐったらぁ………」
「……………」
「ここ、ふぁんぐの部屋じゃないよ?僕ここで寝たことないよ?」
「……………だったらどうした」
「ふぁんぐの横で寝る」
「なぬ?!」
盲点だった。
しいた布団と、畳との高さなどいつものベッドと床に比べれば微々たる物。
足を投げ出し布団からはみ出しつつも、ふぁんぐにぴっとりと張り付いてZZZ...
「…………熱い…………」
やがて狼曉も熱くなったのか、もぞもぞと動き出し今度はふぁんぐの頭と壁との間の畳でごろん。もちろんふぁんぐを踏みつけていくのを忘れない。
しっかりとふぁんぐの枕に自分の頭を乗せるのも忘れない。
「…………くそ…………」
そして祖父母はえらくお気に召していたが、番犬の資質をばっちり発揮。
車の音でワンワンワン。祖父母がトイレにおきてガルルルル。
祖母などは感激して
「お父さん、今日はセコムいらないわね!!」
・・・
「ったくさぁ…」
朝。
ふぁんぐがまだむべりーに文句を垂れる。すると。
「何よ、人のことを棺桶みたいなせまっちぃところに寝かせといて文句あるの?」
「じゃぁ母さん、広々とした和室で、大魔神に踏み潰されながら永眠を覚悟しつつ寝たいの?」
伸展葬がよいならいつでも変わりますとも。僕は屈葬で静かに眠るから…。
熱い夜は、3夜続いた。