草木も眠る丑三つ時。
ふぁんぐは、かすかな物音を聞いたように思い、目が覚めた。
この気配は…というか、ふぁんぐはこの気配以外には起きない。
ギシ…
スプリングをきしませ、何かがベッドに上がってきた。
む。何事だ。
そしておもむろにふぁんぐのそばに、寝そべった。
朝か?朝方なのか??
いんにゃぁそんなこたァあるまい。だってまだ暗いもん。
というか、いつもと違う。
いつもはもっとなんというかふてぶてしい。が、なぜか今回は…なんか雰囲気が違う。
なんかあったかいな?
「どした?」
声をかけると、首をあげ、なんともいえない不安げな顔でふぁんぐを見る。
「どしたん??」
そしていったん起き上がり、改めてふぁんぐの真上に長々と延びなおした。
「ぐぇ」
蛙のつぶれたような声を出して抗議するふぁんぐだが、ふと気づいた。
ヒック、ヒック、ィック…
布団を通して伝わってくる妙な拍動。心臓とは明らかにちがう、というか、何やってんのお前。いいから上からどかんかい。
「……おまえ、何しゃっくりしてんだ?」
「ヒック、ィック、ヒック…」
「……しゃっくりが怖いのか」
「ヒック、ィック、ィック…」
「…………よしよし………」
どうやら狼曉くん、ケージの中でお休み中にしゃっくりをおこし、不安になってふぁんぐに助けを求めに来たもよう。
ふぁんぐは寒いが布団の中から片手を出し、狼曉君ののど下をなでてやった。
不安げな顔のままふぁんぐの上に乗っている狼曉。だがそんな安定の悪いところで長いことのっていられるはずもなく。
ズルッ。
やれやれ、ようやく軽くなった…ぐぇっ!
一度や二度落ちたくらいでは、諦めない狼曉君。ベッドの上にいるんだからいいじゃないかと思うのだが、いかにせんしゃっくりという強敵を相手に、弱気らしい。ふぁんぐの上にわざわざ乗りなおす。
「狼曉、これはな、しゃっくりって言って、気色悪いしうざったいけど、別に怖いもんじゃないんだ。コレは横隔膜が痙攣を起こしてるだけだ。びっくりすれば止まる。びっくりするか??」
今脅かしたら、絶対パニックで家中ヒックリかえる(笑
「横隔膜ってのは、胸腔と腹腔の境界にある筋板で、腹式呼吸とかのときに働くんだよ」
「…………」
狼曉君はなんか神妙に聞いている。
「舌引っ張ると止まるとかいう話もあるけど、試してみるか??というかソレって、ようは舌なんぞ引っ張られたら絶対びっくりするよね、てか、するといいね、みたいなノリで編み出された方法のような気がしないでもないんだが」
「絶対やだ」
「あら、即答?」
結局狼曉君のしゃっくりはのど元をなでていると30分くらい経って止まり、そのまま狼曉君はふぁんぐの上に居座り、そのままの状態でスズメの鳴き声を聞くハメになりましたとさ。